長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件の最高裁判決

平成30年6月1日、正社員と非正社員との待遇の格差が労働契約法20条に違反するかどうかが問題とされた2つの事件(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)について、最高裁判決が言い渡されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/784/087784_hanrei.pdf
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf

労働契約法20条は、非正社員(有期契約労働者)の労働条件が正社員(無期契約労働者)と異なる場合は、その相違が不合理なものであってはならない旨を定めています。
上記の2つの事件では、この労働契約法20条の適用が争われました。

ハマキョウレックス事件

ハマキョウレックス事件では、正社員と契約社員との間の待遇の格差が問題とされました。具体的には、正社員と契約社員とで、無事故手当作業手当給食手当住宅手当皆勤手当通勤手当等の支給の有無等について違いがありました。

この会社では、正社員と契約社員とで業務の内容に変わりはなく、業務上の責任の程度に変わりはありませんでした。
もっとも、正社員は、期間の定めがなく、転勤・出向や幹部への登用も予定されているのに対し、契約社員は期間の定めがあり(1年更新)、転勤・出向もなく、幹部への登用も予定されていないという違いがありました。

最高裁判決は、結論としては、住宅手当については正社員と契約社員との間の相違は不合理とは認められないとしましたが、無事故手当作業手当給食手当皆勤手当通勤手当については、正社員と契約社員との間の相違は不合理であり、労働契約法20条に違反するとの判断を示しました。

長澤運輸事件

他方、長澤運輸事件では、正社員と退職後再雇用された有期雇用の嘱託社員との間の待遇の格差が問題とされました。具体的には、職種に応じた職務給精勤手当住宅手当家族手当役付手当賞与等の支給の有無等について争われました。

この会社では、正社員と嘱託社員とで業務の内容に変わりはなく、業務上の責任の程度に変わりはありませんでした。また、両方とも配置転換等を命じられる可能性がある点でも変わりはありませんでした。
正社員と嘱託社員と違いは、期間の定めの有無のほかは、嘱託社員が定年退職後に再雇用された者であるという点では、正社員との違いがありました。

最高裁判決は、結論としては、精勤手当についての正社員と嘱託社員との間の相違は不合理であり、労働契約法20条に違反すると判断しましたが、職種に応じた職務給住宅手当家族手当役付手当賞与についての正社員と嘱託社員との間の相違は不合理とは認められないと判断しました。

各支給項目ごとの個別の検討・確認が必要

これら2件の最高裁判決では、正社員と非正社員とで相違のある手当が労働契約法20条に違反するかどうかは、その手当が支給される趣旨をひとつひとつ個別に考慮して判断すべきものとし、実際に、それぞれの手当がどのような趣旨で支給されるものであるかを検討し、差異を設けることの不合理性をひとつひとつ判断しています。

この度の最高裁判決を踏まえると、今後、正社員と非正社員の労働条件に格差がある場合には、各支給項目ごとに、そのような格差が不合理なものではないかどうかをひとつひとつ検討・確認しておく必要があると考えられます。