企業活動において、労務管理は、最も重要な分野のひとつです。
労働契約に関しては労働者保護を目的とした様々な法令や制度がありますが、近年は、労働者の権利意識も高まっており、労働関係に対する行政や世間一般の関心も高まっていますので、対応を誤ると、大きな紛争となり、多大な有形・無形の損害が生じる危険があります。
そのため、企業は、従業員への対応にあたっては、法令遵守に細心の注意を払い、適切に対応する必要があります。
企業から従業員への命令・処分等
企業から従業員に対して命令や処分等を行う場合、個別の状況に応じたさまざなま判断を求められることになります。この判断を誤ると、命令や処分が無効となり、金銭の支払義務が生じる危険がありますので、専門的知見も交えた慎重な判断をすることが必要です。
配転命令・出向命令
従業員に対して、配転(職務内容や勤務地の変更)を命じたり、他企業への出向を命じたりする場合、それが従業員側の意向に反するものであれば、争いに発展してしまう可能性があります。
配転命令や出向命令は、雇用契約等で命令の根拠がはっきりしていなければ、無効とされてしまう可能性があります。
また、命令の根拠がはっきりしている場合でも、命令権の濫用であると判断されてしまうと、無効とされてしまいます。
争いに発展する可能性があると考えられる場合には、専門家である弁護士に相談し、命令の法的根拠や、命令権の濫用と判断される危険性について事前に十分に検討し、紛争を予防しておくことが重要です。
休職
従業員がケガや病気などのために就労が困難となった場合、いきなり解雇するのではなく、一定期間の休職を命じることが一般的です。
もっとも、就労が困難かどうかの判断は難しいこともあり、判断やプロセスについて迷うことも多いと思われます。
また、休職期間の満了時には、復職させるか退職させるかを判断するため、復帰が可能であるかどうかの判断をする必要があります。従業員の側が復職を希望しているものの、本当に復帰が可能なのか、迷うことも多いと思われます。
これらの判断が誤っていると判断されてしまうと、休職や退職が無効であるとして給料等の支払を余儀なくされる可能性がありますので、判断やプロセスについて弁護士に相談しながら進めることが、紛争予防に有効です。
懲戒処分
従業員が不正な行為等を行ったときには懲戒処分を行う必要があります。
しかし、従業員にとっては、懲戒処分は大きな不利益となる処分ですので、非常に厳格なハードルが課せられています。
労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めています。
懲戒処分が有効となるためには、当然のことながら、就業規則に根拠規定がなければなりません。
また、懲戒処分の理由となった事実が実際にあったと認められることも必要です。特に、本人が事実を否定している場合には、本人が否定しているにもかかわらずそのような事実があったと認められるのかどうかについて、非常に難しい事実認定の判断を強いられることになります。
加えて、懲戒処分が重すぎる場合や、他の従業員と比べて不公平・不平等である場合も、懲戒処分が無効となる可能性があります。
懲戒処分に至るプロセスについても、本人に言い分を述べる機会を与えるなど適正な手続を踏まなければ、懲戒処分が無効とされてしまいます。
このように、懲戒処分には非常に厳格なハードルが課せられていますので、懲戒処分を行うに当たっては、事前に慎重に検討する必要があります。検討を始める段階から、判断やプロセスについて弁護士に相談しながら進めることが、紛争予防に有効です。
解雇
企業活動を続けていると、従業員を解雇せざるをえない場面に直面することを避けられません。
しかし、従業員にとって、解雇は極めて大きな不利益処分であり、やはり、非常に厳格なハードルが課せられています。
労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。
もし、解雇が有効性であると争われてしまい、最終的に裁判所で解雇が無効であると判断されてしまうと、その間もその後も従業員の地位は失われていないということになり、企業側は給料の支払も続けなければなりません。これは、企業側にとっては大きな負担となります。
そのため、解雇をする場合には、事前に慎重に検討する必要があります。検討を始める段階から、判断やプロセスについて弁護士に相談しながら進めることが、紛争予防に有効です。
従業員からの請求への対応
未払残業代等の請求
従業員から未払い残業代の支払を請求される事件が増えており、そのような事件を積極的に取り扱う法律事務所も増えています。
もし、支払うべき残業代を支払っていなかったのであれば、当然これは支払わなければなりません。訴訟を提起され、判決となった場合には、未払い残業代に加えて、付加金という制裁金のようなものを加算されてしまう可能性があります。速やかに示談交渉を行い、支払うべきものを支払い、速やかに紛争を解決することが企業活動にとっても重要です。
他方で、従業員側からの請求が不当であったり、根拠がない場合には、支払う義務のないものを支払う必要はありませんので、指摘すべき点をしっかりと主張立証していく必要があります。
いずれにしても、従業員から未払い残業代の請求があった場合には、速やかに対応方針を見極め、適切な対応を行うことが重要ですので、早期に弁護士に相談することをおすすめいたします。
セクハラ・パワハラの申告への対応
従業員から職場の上司等によるセクハラ・パワハラ等の被害を申告された場合、どのように対応すべきか分からず困惑してしまう企業も多いようです。
申告について適切な対応しなければ、被害を申告した従業員から「何もしてくれない」と思われてしまい、安全配慮義務の一環としての職場環境配慮義務やパワハラ・セクハラ防止義務に違反しているとして損害賠償請求を受けてしまう危険もあります。
他方、被害の申告を鵜呑みにして、加害者であるとされている従業員を安易に懲戒処分を行えば、その従業員から、根拠のない無効な懲戒処分であるとして損害賠償請求を受けてしまう危険があります。
企業としては、板挟みの状態となってしまい、対応に困惑してしまうことも多いようです。
このような場合には、中立公正な立場を堅持しながら、事実関係を調査し、その結果に応じて必要な処分や措置を行う、というプロセスを適切に行う必要があります。
プロセスの進め方や要所での判断を誤れば、申告者や加害者とされた従業員から責任を追及される可能性もありますので、当初の段階から、弁護士の助言を受けながら進めることが、紛争予防に有効です。
安全配慮義務違反
労災事故やセクハラ・パワハラ等に関し、使用者に安全配慮義務違反があったとして企業が損害賠償を請求されるケースもあります。
このような場合には、当然のことながら、事実関係を適切に把握し、対応方針を見極め、適切な対応を行っていく必要があります。
訴訟を提起された場合にも、事実関係や法的判断について争うべきところがあれば争い、適切な主張立証を行っていく必要があります。
その他、従業員との関係における様々な問題に対応します
以上に挙げたもののほかにも、企業は、採用・試用期間、退職者への対応(競業避止、秘密保持等)、退職勧奨、有期雇用者への対応、就業規則の変更など、労務管理に関しては日常的に大小様々な問題に直面しており、その都度、適切な判断を求められます。
弁護士から助言を受けながら対応することにより、紛争を予防し、損害の拡大を抑制することができます。
当事務所では、従業員との関係における様々な問題について、ご相談・ご依頼に対応しております。問題が深刻化する前の早い段階から、お気軽にご相談ください。
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