不動産競売物件での通行地役権

最近、不動産業界の景気が上向きで、競売物件でも高値がつくこともあるという話を耳にします。
そんな競売物件で、気に留めておきたい判例を今回はご紹介します。
最高裁平成25年2月26日判決(判例時報2192号)です。

抵当権者が不動産の競売を申し立て、売却された事案で、
論点としては、競売物件について登記のなされていない通行地役権が設定されていた場合に、競売による売却により通行地役権が消滅するか否かは、どのように判断されるかというものです。

まず、前提として、通行地役権は、登記がなくとも、継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであれば、土地の譲受人に対抗できるという過去の最高裁判例が存在します。
この最高裁判例の延長として、抵当権者が競売を申立てた場合に、通行地役権が抵当権に対抗でき、民事執行法59条2項で消滅しないとされるのは、いつの時点の事情で判断すればよいかというのが今回の最高裁判例の判断です。

結論として、抵当権設定時の事情、というものでした。

判決内容を簡単にまとめますと、抵当権設定時に、継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らであったかどうかを判断し、明らかであったならば、通行地役権は競売でも消滅せず、そうでなければ通行地役権は競売により消滅するというものです。
なお、この判決の第一審及び第二審は、競売による売却時の事情を基準として判断するとしましたが、最高裁で否定されました。

この最高裁の判断は、論理的には正しいと思いますが、競売物件の買受人が抵当権設定時の事情を把握することは難しいと考えられます。
この点、執行実務では、通路があり現実に通行がなされている場合には、現況調査報告書に通路が存在すること等を記載し、評価においても通行権の存在を前提とする減価を行うということですが、買受人にとっては、実際に通行地役権が消滅する否かはやはり気にかかるところです。

競売での入札前でも落札後でもそのような法的判断に悩まれる方がいらっしゃればご遠慮なくご相談ください。

 

阿部 迅生

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